19世紀半ばに蒸気船が日本を初めて訪れて、その存在を知った日本人が
すぐにその模型を作ったことが知られています。
1853年に黒船がやってきた同じ年に、当時佐賀藩に出仕していたカラクリ儀右衛門こと
田中久重(東芝の創始者)が蒸気機関車の実動する模型を作りました。
外形をコピーするだけでも大変なのに、実際に動く内燃機関を見よう見まねで
作りだしたのです。
これだけでなく、16世紀に種子島に火縄銃がもたらされたときも同様です。
当時としてはこの先進的な武器が瞬時に日本国内で大量生産され、織田信長がそれを使って
天下を取る所までになったのは有名です。
通常なら、このような先進的な工業技術を学ぶことすらできず、当時の強国であった西欧諸国に
支配される植民地になるのが普通でした。
コピーをして物を作り出すためには、それを可能にする技術が必要です。
種子島銃にしても正確に鉄の棒の中心をくり抜き筒にする技術が、すでに日本に存在していたからこそ
量産が可能になりました。
第二次世界大戦後、日本が目覚ましい復興を遂げた裏には、それに必要な工業力が
すでに存在していたのです。
この東洋の奇跡は、何も工業技術だけではありません。
実は、言語に関しても同じなのです。
明治維新で世界と向き合った日本の文化が、急速に外国文化を取り込むことが出来たその裏には、
外国文化を理解し吸収することができる基本がすでに日本語にあったからです。
例えばniggardlyという語は、けちとか出費を抑えるという意味の北欧起源の単語で
差別とは無関係な単語です。
実際にこれを聞いた黒人の市役所員が差別されたとして、上司を訴えたという事件がありました。
これは市役所員がその単語の意味を知らなかったことで起こった笑い話のような実話です。
英語世界では、個人による単語力の差は非常に大きいのです。
イギリス人やアメリカ人は英語を使っているから、どんな単語でも知っていると思うのは、
大きな誤りです。
一部の高度な教育を受けた人を除き、通常のアメリカ人やイギリス人は、
驚くほど英語を知らないのです。
それに反して、日本の社会は昔から識字率が高く、全員が同様に高度な言語力を備えています。
普通の日本人の持つ単語量は、英語社会の人の単語量よりもずっと多いと思われます。
ゆえに、英語の意味を日本語に転換し吸収することは、比較的容易です。
日本人にとって英語は難しいと、へりくだる必要はありません。
実際は、日本語の方がずっと複雑で、それを使用する日本人の言語力は、
一般的な英語を使用する人よりも、各段に高いと言うことができます。
日本人は、もっと自分の言葉や文化に自信を持つ必要があります。
多くの日本人は、自分達は英語が不得意だと言います。
実はそれは、日本語と同じレベルで他言語を理解しようとするからです。
日本人は英語が出来ないのではなく、日本語が超越しているため
英語がそのレベルに達しないのです。
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